亜鉛が不足すると味覚障害、皮膚炎、脱毛症などを起こします。

亜鉛は、鉄や銅などと同じように、私たちの体のたんぱく質合成や免疫機能の維持に欠かせない必須微量元素です。毎日、食事の中から微量に摂取されていますが、不足すると、体にさまざまな不調を引き起こします。特に、小児や高齢者では、亜鉛欠乏症になっているのに、気づかずに放置している人は少なくありません。早めの対処が肝心です。

亜鉛の主な働き

亜鉛は300種類以上の酵素の活性化に必要な成分です。細胞分裂や新陳代謝に重要な役割を果たし、その効果は全身に及びます。

  • 皮膚の代謝(皮膚を守る、脱毛を防ぐ)
  • 成長を促す(小児のみ)
  • 男性ホルモンの分泌を促す
  • 妊娠の維持
  • 骨格の発育を促す
  • 味覚の維持
  • 精神・行動への影響
  • 血糖値を下げるインスリンの合成
  • 免疫機能(感染症を防ぐ、傷の回復を促す、活性酸素の増加を抑制)
食事がおいしくなかったり、髪の毛がぬけることも

食事がおいしくなかったり、髪の毛がぬけることも

亜鉛不足によって引き起こされる症状

亜鉛不足による体の不調として、比較的知られているのが、味覚障害です。味覚をとらえる味蕾の中にある味細胞は新陳代謝が激しい細胞で、その新陳代謝には亜鉛が重要な役割を果たしています。そのため、亜鉛が不足すると、味を感じにくい、変な味がする、金属を口に含んだような味がして食べ物がおいしくないといった症状が出ます。

また、皮膚や毛髪のたんぱく質の合成にも亜鉛が関わっており、不足すると、湿疹、皮膚炎、口内炎、抜け毛が起こりやすくなります。放っておくと亜鉛不足によって髪の毛がまったくなくなってしまう人もいます。さらに、介護を受けている人の場合は、褥瘡ができやすく、治りにくい状態になるので特に注意が必要です。それから、貧血、骨粗鬆症、食欲不振、風邪などの感染症にかかりやすい、傷が治りにくいという症状も、亜鉛不足によって起こることが少なくありません。

男性の場合は、男性ホルモンのテストステロンの合成に亜鉛が関わっており、亜鉛が不足すると勃起不全や性腺の発達障害を生じやすくなります。精液中の亜鉛不足が原因で不妊症になっている人もいます。一方、こどもの場合には、亜鉛が不足すると、身長が伸びない、体重が増えないといった成長障害につながる恐れがあります。成長ホルモンの異常などが原因でない低身長のこどもの6割くらいが、亜鉛の不足が原因とみられています。

日本食品標準成分表2015年版(七訂)より作成

日本食品標準成分表2015年版(七訂)より作成

亜鉛不足の原因は摂取不足だけでない

亜鉛は体の中で合成したり蓄えたりできない元素です。亜鉛が不足する要因には、主に次の5つがあります。

まず、最初にあげられるのは、亜鉛を含む食品の摂取不足です。加工されたインスタント食品ばかりを使い、亜鉛を含有している自然な食品の摂取が不足している場合などが考えられます。

2つ目には、慢性肝炎、過敏性腸症候群、クローン病、食物繊維の過剰摂取によって、亜鉛の吸収が悪くなることです。食物繊維も欠かせない栄養素なのですが、取り過ぎると亜鉛が吸収されにくくなります。3つ目の要因は、妊娠、授乳などによって亜鉛の需要が増えること、4つ目は、亜鉛の排出を促進する薬の服用、糖尿病、慢性腎障害などによって、尿からの亜鉛排出量が増えてしまうことです。5つ目の要因は、過度の運動です。陸上の実業団の男子選手の約15%、女子選手の約30%に亜鉛不足による貧血がみとめられるとの報告もあります。激しいスポーツをしている小中高生は、亜鉛を含む食品を十分とらないと亜鉛が不足するリスクがあります。大人でもマラソンなど激しい運動をしている人は要注意です。

子どもは成長が障害されることも

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過度な運動が亜鉛不足の原因になる?

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