「おなか」のお話―漆原史彦医師より―
●腸内細菌はバランスが重要です
腸内細菌とは腸内に棲む細菌の総称です。腸内には約1000種類100兆個、重さにして約1~1.5kgもの腸内細菌が棲み着いております。
腸内細菌叢(腸内フローラ)とは、その腸内細菌の集まりの事です。
近年では次世代シーケンサーといわれる装置の登場により腸内細菌の研究が進み、便中の個別の腸内細菌だけでなく、腸内細菌叢の種類や占拠率、機能の推定が可能になってきています。
私達の腸内細菌はよく善玉菌、日和見菌、悪玉菌と分類されており、有用菌の代表がビフィズス菌や乳酸菌、有害菌の代表がウェルシュ菌やディフィシル菌です。このどちらにも属さないのが日和見菌で、善玉菌・有害菌の優勢な方に味方をします。
今までは善玉菌の有用性が取りざたされてきましたが、遺伝子解析により、腸内細菌叢のバランスも重要なことが分かってきています。
また腸内細菌のバランスは国ごとで大きく異なっており、居住地域や民族に強く関与していることが分かっています。日本人は遺伝子的に小腸の乳糖の分解や吸収能が弱く、大腸に届きやすいため、乳糖を餌とするビフィズス菌が増殖いやすいといわれています。また日本人は食物繊維の発酵により生じる水素が、他国ではお腹の張りにつながるメタン産生に消費されるのに対し、腸内細菌に有益な酢酸の作成に消費されることが分かっています。
腸内菌叢は年齢によっても異なります。
胎児期(生まれる前、母親のお腹の中)では腸内はほぼ無菌の状態ですが、周りの環境から様々な菌を取り込むことで腸内菌叢が形成されます。
母乳中にはビフィズス菌を増やすオリゴ糖が含まれており、ビフィズス菌が増加し、小学生低学年くらいでそのバランスは安定し、老年期を迎えるとそのバランスは崩れ、ビフィズス菌が減っていき、ウェルシュ菌をはじめとした悪玉菌が増えていきます。つまり、老年期を迎えると腸内菌叢が乱れやすいとされています。
腸内菌叢は食事・環境の変化、加齢、ストレス、病原微生物、薬物などによってしばしばバランスをくずすことがあり、その結果、下痢や軟便、便秘、腹部膨満感といった腹部症状を発症します。また腸内菌叢は腸内に加え、全身の免疫反応にも深く関与が指摘されています。
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