「おなか」のお話―漆原史彦医師より―
●脂肪肝と腸内細菌 ~胃薬の功罪~
今や日本人の3人に1人が脂肪肝といわれていますが、脂肪肝が肝硬変や肝臓がんへと進行する可能性があり、心疾患や脳梗塞などのさまざまなリスクも高めることがわかってきました。
またお酒を飲まない人や若い女性にも急増しています。
脂肪肝の成り立ち(1st hit)は過栄養と運動不足による筋肉量の低下です。筋肉は第2の肝臓ともいわれ、脂肪の分解に重要な臓器です。
そのため運動不足や過度のダイエットで筋肉量が少ないと体重が少なくても肝臓に脂肪が蓄積していきます。
また単純な脂肪肝(NAFLD)から肝機能障害を伴う脂肪性肝炎(NASH)に移行するにはストレスなどの様々な要因(2nd hit)が関与していますが、そこには腸内細菌もかかわっています。
腸内細菌が乱れた状態(Dysibiosis(ディスバイオーシス))があると、腸内環境を守る粘液が減少したり,腸の壁に隙間ができ(tight junctionの破綻等)、そこから有害な物質が門脈という血管を通じて肝臓内に入ってしまい、炎症が起きることがNASHの一因といわれています。
腸内細菌が乱れる原因として、最近では胃薬、特にプロトンポンプ阻害薬(PPI)といわれる薬の影響が懸念されています。逆流性食道炎や胃潰瘍などで広く使われており、長期処方されることも多いですが、PPIは胃酸分泌をさげるため、本来強酸の胃酸の殺菌作用が低下し、不要な菌が腸内に流れ込んでしまうからです。
もちろんPPIにもたくさんのメリットがあり、単純に悪いものではありません。症状などに合わせて内服薬を見合わせたりすることが大切です。
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