「おなか」のお話―漆原史彦医師より―
●ポリープ切除について

一口に大腸ポリープといってもたくさんの種類があり、すべてのポリープを切除する必要はありません。
大腸ポリープには将来、大腸がんになる可能性のあるポリープと、大腸がんにはならないポリープとがあります。がんにならないポリープはそこにあるだけです。血便などの症状を引き起こす場合には切除することもありますが、多くは治療の必要はありません。
大腸がんになる可能性のあるポリープには、腺腫とSSL (sessile serrated lesion)という種類があります。腺腫は大腸内視鏡検査中に最も多く発見されるポリープで腫瘍です。
がん化するポリープを全て取りきることをクリーン・コロン(clean colon)と呼びます。これを達成すると大腸がん死亡率が低下することが世界的な臨床研究で明らかにされており、欧米では一般的な治療目標でした。
O’Brien MJ, Winawer SJ, Zauber AG, et al. The National Polyp Study. Patient and polyp characteristics associated with high-grade dysplasia in colorectal adenomas. Gastroenterology 1990; 98: 371-379
国内では従来、径6mm以上のポリープやがんの可能性がある病変は切除対象で、径5mm以下のポリープは経過観察するという考え方をしていましたが、内視鏡器具の発展により日本でもこのクリーン・コロンが徐々に推奨されてきています。
当院では、大腸内視鏡検査の際にポリープが見つかった場合、可能な限り検査中に切除を行います。
この場合の切除とは生検(病変の一部分のみを採取すること)ではなく、特殊な器具を使い病変そのものを取り除くことです。
施設によってはポリープ切除後の出血などのリスクを恐れて生検のみ行い、別の医療機関へ紹介するケースもありますが、これでは複数回の検査を受けなければならず、患者様の負担も大きくなってしまします。
当院ではコールドスネアポリペクトミー(CSP)と呼ばれる処置を行い、初回検査からポリープの切除を可能としております。CSPはスネアという輪状のワイヤーを用いてポリープを切除する方法です。傷は浅いですが、傷口が少し大きい場合は止血処置を行うこともあります。
すでにがん化している可能性のあるポリープを切除する際は取りこぼし(遺残)がないように治療方法をしっかりと選ぶ必要があります。遺残があると、その後に手術が必要になるケースもあります。
大切なことはポリープががん化するリスクがあるものかを判断し、適切な治療を選択する診断技術になります。
当院検査医師は内視鏡専門医であり、大腸ポリープ、大腸がんの専門機関で内視鏡の診断学、治療を学んでおり、より低侵襲、低リスクな治療を患者様に提供しております。
また日帰りでの切除困難な病変が見つかった際には通常、足利赤十字病院へ紹介させていただいております。日赤でも外来、内視鏡業務に従事しており、不要な追加検査のないシームレスな連携が可能です。
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