「おなか」のお話―漆原史彦医師より―
●大腸内視鏡検査は大腸がん死亡率を7割減らせる!
大腸がんは怖いけど、大腸カメラを受ける勇気が出ない。検診で便潜血を受けて、陰性だったから、もう大腸カメラは必要ない。
そういった考えの方はたくさんいらっしゃると思います。
では実際はどうでしょうか。
国立がん研究センターが報告している海外のデータでは、便潜血検査化学法を毎年受診した場合には33%、2年に1度受診した場合でも13〜21%大腸がん死亡率が減少することがわかっています。
わが国でも便潜血検査が一般的に癌死亡率を約3割の減少効果があるといわれており、同等の効果と言えます。
しかし便潜血検査の感度(大腸がんがある場合に便潜血検査が陽性となる確率)は対象とした病変の進行度や算出方法によってかなりの差があり、30.0〜92.9%と差があります。
その点、大腸カメラで大腸の奥まで観察した場合、大腸がんの発見感度は95%以上とされ、最も優秀な検査と言えます。
大腸内視鏡検査は大腸癌やその前癌病変のポリープに対する治療法であると同時に予防法であるといえます。
当院でもより苦痛の少ない大腸内視鏡検査を目指し、細径内視鏡(細いカメラ)や鎮痛剤(痛み止め)、鎮静薬(リラックスして眠る薬)の使用や、より痛みの少ない挿入法を実践しております。
無痛式内視鏡で、大腸がんを予防しましょう!
●大腸内視鏡検査は大腸がん死亡率を7割減らせる!Vol.2
New England Journal of Medicineという最も権威のある医学雑誌に、ハーバード大学で研究している西原玲子さんという日本人の方のおもしろい論文が2013年に掲載されました。
タイトルは「Long-Term Colorectal-Cancer Incidence and Mortality after Lower Endoscopy」(2013; 369: 1106-1114/1095-1105)、日本語で言えば「内視鏡検査後の大腸がんの発症率と死亡率の長期間調査」というものです。この研究は看護師などの医療従事者約89000人を対象とし、1988年から2012年という長期間の調査を行った信ぴょう性の高いものです。
この論文の結果ですが、なんと大腸内視鏡検査を受けた人は、受けなかった人より大腸癌による死亡率が68%低かった!さらに直腸やS状結腸といった、肛門に近い側の「遠位大腸」に限ると、死亡率は82%低かった!!という驚くべき結果でした。
(Nishihara R, Wu K, Lochhead P, et al.: Long-Term Colorectal-Cancer Incidence and Mortality after Lower Endoscopy. New England Journal of Medicine 369: 1095-1105, 2013.)
日本でも「大腸内視鏡検査による大腸がん検診の有効性評価」研究(通称「角館study」)が横浜市北部病院消化器センター工藤 進英センター長によって発足されています。
これは秋田県仙北市で毎年便潜血検査を受ける群と、毎年便潜血を受けることに加えて1回の検診大腸内視鏡検査を併用する群で大腸がん死亡率を比較する研究で、2009年の開始以降、今まで全国2位の大腸がん死亡率を誇っていた秋田県がその順位をどんどん下げていっています。
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