「おなか」のお話―漆原史彦医師より―
●腸内フローラとストレス
近年、腸内常在菌の構造(腸内細菌叢、腸内フローラ)と機能が徐々に解明され、腸内常在菌への関心が高まってきています。
その中で腸内フローラとストレスの関係についても研究が進んでいます。
万病の元であるストレス(身体的、精神的いずれも)は脳に作用し、全身に炎症性物質を過剰に分泌させます。
その炎症に対する反応として免疫系が活性化し、身体や心にも作用することが分かっています。
ストレスと関連する病気としてアトピーや喘息や関節リウマチ、炎症性腸疾患、代謝性疾患、心臓病、慢性痛など慢性炎症疾患、アルツハイマー病やうつ病が挙げられます。
実は、このストレスによる免疫系の活性化には腸内フローラが必須であることが動物実験で分かってきています。
また腸内細菌自体もストレスによってバランスが崩れてしまうことも分かっており、腸内フローラとストレスは相互作用しつつ密に関連しています。
これらのことから私は腸内細菌を整えること、またストレスのない生活を送ることは今後の医療の要である“予防”に大切な役割を担っていると思っています。
腸内フローラは一般的に善玉菌20%と悪玉菌10%、日和見菌70%のバランスが理想です。この腸内フローラのバランスを正常に保つことが大切です。
そのためにつぎのポイントに取り組んでみてはいかがでしょうか。
善玉菌を応援するために
(1)増やす
ビフィズス菌や乳酸菌を摂取しましょう。一般的に摂取が進められるヨーグルトに加え、チーズや、みそ、しょうゆ、納豆などの昔から日本にあるものにも多くの乳酸菌が含まれています。少量でも毎日食べることが大切です。また、乳酸菌にもたくさんの種類があり、人それぞれ効果的な乳酸菌が違います。市販のヨーグルトも食べ分けてみて、体に合うものを探すこともおすすめです。発酵食品もいいですね。乳酸菌飲料や、乳酸菌、 ビフィズス菌が強化されたサプリメントが有効な場合もあります。
(2)育てる
オリゴ糖はビフィズス菌の大好物です。積極的に摂取するには、「きな粉」や「大豆」も有効ですが、砂糖と取りすぎるとおなかの動きが悪くなってしまいます。日常的によく摂取できる「玉ねぎ」や 「ねぎ」、「絹ごし豆腐」、「人参」なども有効です。
(3)悪玉菌をやっつける
食物繊維は大腸内で発酵、分解され善玉菌の栄養源として利用されるとともに、不溶性食物繊維には腸を刺激して蠕動運動を活発化し、便通をよくします。これにより、悪玉菌の増殖を抑え、かつ悪玉菌が作る有害物質の排泄も促されます。
食物繊維の種類については以前のコラムもご参照くださいね。また水分をよくとることも蠕動運動を促します。
また食生活以外でも規則正しい生活を送って、適度な運動や充分な睡眠をとり、ストレスをためないようにしましょう。
・ストレスと陰性情動の源流は何か ストレスによる情動変容の誘導における炎症の役割
北岡 志保ら(神戸大学 大学院医学研究科薬理学分野) 心身医学(0385-0307)57巻9号 Page922-928(2017.09)
・腸内環境を整えて気分スッキリ! 健康増進! 善玉菌を増やす体に良い食べ物、食事とは
塚田 定信(大阪市立大学医学部附属病院) 大阪市立大学看護学雑誌 (1349-953X)13巻 Page60(2017.03)
・腸内常在菌が“健康寿命”を決める!〜大切な腸内環境コントロール〜
辨野 義己 大阪市立大学看護学雑誌 第13巻(2017.3)
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